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2018年7月号(1)
住宅・不動産
CFP®認定者 橋本 秋人

「空き家」で困らない、慌てないために

 「老人ホームに入所することになった」、「子どもの家で同居することになった」、「実家を相続したけれど、住む人がいない」などの理由で自宅が空き家になったり、実家の空き家を抱えてしまったがどうしたらよいか分からない、という相談が増えています。
 ご自身、あるいは周りにも、このような悩みを持つ方は意外に多いのではないでしょうか。
 今回は、空き家を取得したときに困らない、慌てないように、対応方法について解説をします。

空き家の現状

 総務省統計局の「平成25年住宅・土地統計調査」によると、全国には約820万戸の空き家があります。空き家率は13.5%で、総住宅数の約7件に1件が空き家ということになります。
 さらに直近の民間予測では、15年後の2033年には空き家数が1955万戸、空き家率は27.3%に達するとされています(野村総研「2030年の住宅市場と課題」2018年6月13日)。

 空き家は、①賃貸住宅用の空き家、②売却用の空き家、③二次的住宅(別荘など)、④その他の空き家、の4種類に分類されています。そのうち、④のその他の空き家が、いわゆる「実家の空き家」で全国に約318万戸ありますが、今後少子化や人口減少が進むことにより、大幅な増加が危惧されているのです。

空き家を所有したら

 それでは、実際に空き家を所有した場合、どのような対応方法があるのでしょうか。
 大きく分けると①保有、②活用、③売却の3つの選択肢があります。
 これから、それぞれの対応方法について解説をします。

①空き家のまま保有
 空き家を所有している人の選択肢として最も多いのは、空き家のまま保有しているケースです。
 国土交通省の「平成26年空家実態調査」では、空き家にしておく理由として「物置として必要だから」が最も多く、次いで「解体に費用がかかるから」となっていますが、「特に困っていないから」「仏壇などが捨てられないから」「他人に貸したくないから」など、所有者の気持ちを理由とするものも上位に見られます。

 ただし空き家のまま保有する場合でも、何もせずに放置しておいても良いわけではありません。
 一般的に空き家は人が住んでいる住宅と比較して劣化が速いため、適切な維持管理を怠ると傷みが速く進行します。
 町なかで時々見かける朽ち果てた空き家は美観上の問題だけではなく、臭気、防犯、防災上も周辺地域に迷惑や不安を与えます。
 国も、このような迷惑な空き家の対策として、平成26年に「空家等対策の推進に関する特別措置法」を施行しました。
 この法律では、地域への悪影響が大きい空き家に対しては、市町村が特定空家に指定できることとしています。特定空家に指定されると、指導、勧告、命令を経て、なお是正されない場合、市町村が所有者に代わり建物の解体などを行うとともに罰金も課すことができます。また勧告が出されると土地の固定資産税の軽減も適用除外となりますので、税金も大幅に上がります。
 そのために、空き家のまま保有を続ける場合でも、適正な維持管理を行い、空き家をきれいな状態に保つ必要があるのです。
 なお最近は空き家の管理サービスを行う会社も増え、利用者も増加しています。
定期的な見回りや外部清掃、通風などを代行し、利用料金は月千円くらいから1万円が多いようです。自己管理をする場合のコスト(経済コスト+時間コスト)と比較して利用の検討をしてみるのも良いと思います。
 保有で大切なことは、コストを意識しながら、特定空家にならないよう、適切な管理を継続することです。

②空き家の活用
 空き家の活用とは、空き家が持つ収益性や資産価値を利用して収入を得ることです。
 活用の手法としては以下のケースがあります。
  ●建替えないで賃貸…貸家、シェアハウス、民泊、介護施設、イベントスペース、古民家カフェなど
  ●建替えて賃貸…アパート、店舗、賃貸併用住宅など
  ●更地にして活用…駐車場、貸コンテナ、貸地など
  ●リバースモーゲージ
 ただし、活用は収入を得られる反面、リスクも伴います。不動産は個別性が高いため、立地や環境、生活の利便性などにより収支が大きく左右されます。また都市圏と地方圏では、賃貸の需要や賃料などが異なります。
 専門家と相談しながら、長期的に入居の心配がない立地か、収支に問題はないか、融資が借りられるか、将来引き継ぐ家族はいるか、など事業計画をよく見極めて検討するようにしましょう。

③空き家の売却
 空き家を取得した場合、最終的には売却するケースが最も多くなっています。ただし、空き家を取得してすぐに売却をする人ばかりではなく、しばらく保有してから売却する人も多く、中には10年以上空き家のまま保有してから売却する人も少なくありません。
 空き家の売却に対しては、平成28年4月に「空家に係る譲渡所得の特別控除」が施行されました。この特例は、相続から3年を経過する日の属する年の12月末までに一定の条件を満たす空き家を売却した場合、譲渡利益から3,000万円を限度に控除できるというものです。売却時の税金を軽減することで、空き家を流通市場に放出し、住宅として利用してくれる人を増やそうという国の意図があります。空き家の所有者も、売却で利益があった場合にこの適用を受けることができれば大幅な節税が図ることができます。この特例には期限があるため、相続後3年以上保有してから結局売却することになると、売却するまでの保有コストを払い続けた上に、特例の適用も受けられないということになります。そのため空き家になる前から売却の可能性についても検討しておくことが大事です。

 将来、家族の誰かが使う予定があるのなら「保有」を、賃貸などで収益を生むことができるなら「活用」の検討も、どちらにも当てはまらない場合は「売却」を、というように、将来の可能性について日頃から家族で話し合うことが大切です
 空き家になってから、あるいは空き家を取得してから慌てない、困らないように、事前の準備をしておきましょう。

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