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2018年9月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 蓑田 透

リタイア後の海外移住の注意点

 リタイアした年配の方で、海外への移住を考えている人が増えています。老後の人生を送るにあたり物価が比較的安く温暖な東南アジアなどの国々で悠々自適に暮らすという考えは以前からありましたが、最近は海外移住や現地に関する情報がインターネット等で入手しやすくなったこと、現地国での外国人誘致政策が進んでいることなどが背景にあるようです。そこで、リタイア後の海外移住の注意点ついて紹介いたします。

移住時のビザ申請手続き

 外国に滞在する場合は目的、滞在期間によってビザが必要となります。下記のように短期の観光目的であれば国によってビザが免除されたり比較的容易に取得できますが、中長期の滞在となれば専用のビザが必要になります。移住を計画する際には必ず確認しておきましょう。
 ・観光目的(数週間~3か月前後) :観光ビザ(取得が容易。国によっては免除)
 ・商用、中長期滞在目的      :各目的別のビザが必要(一定条件が必要)

 ビザに関する情報(免除制度、観光ビザの有効期間、目的別ビザの申請条件や有効期間など)は国によって異なります。インターネットでも情報収集できますが、各国の駐日大使館へ問い合わせるのがよいでしょう。
 移住の目的や期間は人それぞれですが、実行に移す場合、まずはビザ申請が容易(または免除)な観光ビザで現地生活をお試し体験されるのが無難かもしれません。その後現地生活にも慣れたら改めてビザを申請して中長期の滞在に入ることもできます。
 また一方で、ビザの有効期間経過後や何らかの事情(たとえば日本の家族や自身の健康面に関する事情など)で日本へ帰国することも想定しておく必要があります。帰国後の住居、銀行口座など日本での生活基盤については、できれば残しておいた方がよいでしょう。

移住先での医療事情

 安全で快適な海外生活を送るためには、衣食住の環境の確保は言うまでもありませんが、その他、公的医療保険制度など医療事情について確認しておく必要があります。医療保険に加入できないと医療機関にかかった際の医療費を全額自己負担しなければならず、高額の支払となる場合があります。事前に移住先の国に公的医療保険制度があるか、外国人でも加入できるか、などを確認しておきましょう。また、たとえ医療保険に加入できたとしても医療費そのものが高い場合もあります。ちなみに日本は諸外国に比べ医療保険制度が発達していて保険料も比較的安く、また医療機関で受けられるサービスも充実しています。移住先の医療保険制度に不安があるのであれば、日本に住民票を残し日本の健康保険に加入し続けるということも選択肢の一つとして考えておくべきでしょう。
 ただ、その場合でも突然の病気や事故による負傷の場合、現地の医療機関に診てもらう必要があるので、医療保険なども組み合わせて加入することも検討しましょう。比較的安価な県民共済保険等を含め、海外渡航中の入院やケガもカバーされる保険に日本でも加入できます。(日本に住民票がある場合に限る。また、海外では利用可能な医療機関が制限される場合があるので事前にご確認下さい)

外国に居住する場合でも日本に生活の実態があれば日本に住民票を残しておくことができます。たとえば年に数回の仕事や、親の介護で日本に数ヶ月滞在するケースが該当します。この場合は健康保険、介護保険の保険料や税金の支払い義務は残ったままとなります。

移住のためのマネープラン

 前述のように、日本の医療機関を利用するために日本の住民票を残したり、現地の治安を考慮して安全な地域に居住するなど、快適性・安全性を求めるためには費用がかかります。物価の安い国を選んだとしても意外に費用はかかるものです。安易な資金計画ではなく、十分に検討した上で計画を立てるようにしましょう。
 現地での生活費については、ある程度インターネットなどでも調べることができますが、観光目的で短期のお試し体験の機会があれば現地で直接調べましょう。

日常生活資金

 現地では就労しない限り所得がありませんから、現地に預貯金がなければ、生活費は日本の預貯金から支出することになるでしょう。クレジットカードやデビットカードによる決済ができれば便利ですが、カードが使えなければ日本から現金を持参または送金する必要があります。
 日本の銀行口座から現地銀行口座へ送金する場合は外国送金処理となり、銀行への手数料(送金、受取とも)や為替手数料が発生しますが、最近では一部のネット銀行や銀行以外の海外送金業者が比較的安価にサービス提供しています。

税金

 一般的に税金(所得税)は、居住地や所得の発生地により納税義務(申告義務)の有無が決められ、国によって考え方が変わります。居住地主義を採用する日本では、海外滞在期間中も住民票を残していれば日本での納税義務は残りますが、住民票がなくても年金など受給時に源泉税が発生する場合があります。一方、移住先の国でも一定の所得額があれば課税される可能性があります。移住先の国と日本で両方納税した場合、日本との租税条約締結国であれば二重に支払った税金は還付されます。詳しくは専門家や税務署に確認してみて下さい。

 海外生活では想定外のことが起こる可能性が十分に考えられます。いろいろなケースを想定し、その対処方法も調べるなど十分な計画を立てておきましょう。好んで海外移住を考える人であれば、そうした計画を立てることも楽しみの一つなのでしょうね。

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