FPコラム

日本FP協会が認定するファイナンシャル・プランナーの上級資格をもったCFP®認定者が、くらしとお金に関する社会保障制度や税制の解説から、生活の中で見つけたちょっとしたアイデアまで、みなさまのファイナンシャル・プランニングを考える際のきっかけ作りとなるような情報をファイナンシャル・プランナーの幅広い視野で取り上げ、月1~2回お送りしています。

  • ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
  • ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。
最新号
2018年11月号(1)
ライフプラン
CFP®認定者 柳田 典子

介護保険制度の改正ポイントと実情を踏まえた準備

 公的介護保険制度は2000年に施行され、3年ごとに改正されています。2017年の改正では、様々な改正と共に、介護保険料改定や自己負担割合の引き上げも行われました。
 今回は、改正のポイントを確認しながら、介護の実情と、準備にあたって知っておきたい事項を整理しましょう。
 厚生労働省「平成29年介護保険法改正」

介護保険料の改定

 介護保険制度の被保険者は①65歳以上の者(第1号被保険者)②40~64歳の医療保険加入者(第2号被保険者)となっています。
 今回の制度改正では、第1号被保険者(65歳以上の方)だけではなく、第2号被保険者(40~64歳)の介護保険料も改定されました※。
 これまでは加入者割といって、各医療保険者(国民健保組合、健保組合、協会けんぽ、共済組合等)における2号被保険者の加入割合に応じて決められていましたが、国民健保組合以外に加入する2号被保険者については、報酬額に比例して決める総報酬割に改められました。
 激変緩和のため、2020年までかけて段階的な実施となりますが、ボーナスも保険料の計算の対象になるということです。

介護サービス費の自己負担引き上げ

 介護保険料の改定に伴い、介護を受けるために必要な自己負担割合の引き上げも行われました。
 世代間・世代内の公平性を確保しつつ、制度の持続可能性を高める観点から、2割負担の人のうち特に所得の高い層を負担割合3割としました。ただし、介護保険活用で、1か月間の負担が高額になった場合、最高で44,400円の負担となり、超えた金額は申請すると支給されます。

2018年8月から、下記のとおりに変更されています。
 年金収入+その他合計所得金額 340万円以上  2割→3割(※)
 年金収入+その他合計所得金額 280万円以上  2割(※)
 年金収入+その他合計所得金額 280万円未満  1割
※2人以上の世帯の場合
 年金収入+その他合計所得金額 463万円以上  3割
 年金収入+その他合計所得金額 346万円以上  2割

 2025年にはいわゆる団塊の世代が後期高齢者となります。急速な高齢化に備え、介護保険制度を維持する為にも、制度改革は急がれているのです。

介護の実情

 既に、2018年4月現在、公的介護保険の要介護(要支援)認定者数は644万人で、この18年間で約3.0倍(65歳以上被保険者数は約1.6倍)となっており、特に軽度の認定者数の増加ペースが拡大しています。
 2025年には65歳以上の高齢者のうち20%、5人に1人が認知症になると言われています。
 一方で、認知症以外の介護原因の1~3位には、脳卒中(男性)、高齢による衰弱(男女)、骨折・転倒(女性)とあり※1、75歳以上の高齢者の占める割合が2055年には25%を超える見込みの中、最近では「老々介護」が増えており、在宅介護では既に6割に及ぶとのことです。
 高齢化と介護は切り離して考えられず、いずれは自分も介護と向き合う必要が出てくると考えておくことが大切でしょう。

 また、今の介護の実情では、自宅での食費はもちろん、施設を利用する場合の食費、日常生活費、居住費や、在宅介護でデイサービス等を利用した場合の食費等は、保険対象外の全額自己負担となります。
 そして、高齢化に伴い、介護を受ける期間も長期化しています。
(公財)生命保険文化センターの調べによると、2015年の介護期間の平均は59.1か月、約5年となっています※2。しかしながら、2014年10月の平均寿命と健康寿命の差は、男性9.02年、女性12.40年です※3。
 日常生活に支障をきたす可能性のある期間は10年前後であり、介護にも繋がる状態と考えて、思いがけず長引くことも懸念しておきましょう。

※1 厚生労働省「平成28年 国民生活基礎調査」表 20
※2 (公財)生命保険文化センター「平成27年度生命保険に関する全国実態調査」
※3 厚生労働省「平成26年版厚生労働白書 ~健康・予防元年~」図表3-1-4

介護の準備

 介護の準備は、お金とサポート体制の両面で考える必要があります。
 介護期間を何年と考えるかも大きなポイントとなりますし、介護を自宅と施設、どちらをどの割合で希望するのかによっても準備金額やサポート体制も異なります。自分の場合はどんな介護の形を希望するのかを、まずは考えてみましょう。
 お金の面では預貯金や介護保障のある保険等、有効なものを探し、早めに準備を始めると負担も軽減されます。
 その時は、介護保険活用の自己負担分だけでなく、保険対象外の金額も想定して、準備されることをお勧め致します。

 サポート体制の面では、まずは家族の意思確認を早めに行っておきましょう。元気なうちに、住まいから近い施設等を確認することもお勧めです。
 更なる準備としては、介護が必要になる前に、全国各地に設置されている「地域包括支援センター」がどこにあるかを確認しておくとよいでしょう。
 この「地域包括支援センター」には、社会福祉士、ケアマネージャー、保健師が配置されており、介護予防のためのサービスメニューの提供を受けたり、気軽に自分や家族の介護の相談ができる施設です。

 何よりも心身ともに長く健康でいられることが第一ですが、年齢を重ねると、どんなことがきっかけで介護を要するかわからないものです。
公的なサポートも上手に活用して介護に備え、対応していくことが大切な時代になってきています。

 介護を前向きに捉えて準備を進めることはなかなか難しいかと思いますが、介護のために蓄えたお金は、元気であれば老後資金として別活用もできます。
 健康でいる生き方を模索しながら、お金の面だけでも苦労が減らせるよう、元気なうちに準備を始めましょう。

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