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テレワーク移住の現状とポイント
総務省は、2021年8月に提言書「ポストコロナの働き方『日本型テレワーク』の実現」をまとめました。その中では、テレワークを「ICTを活用し、時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」と定義し、少子高齢化など社会構造の変化に伴う日本の様々な課題の解決に寄与するものであること、テレワークはより多くの人に労働参加の機会を提供し、地方への人の流れを創出することによる地域活性化や人生100年時代を見据えた多様な働き方の実現にも資するものだ、と述べています。
今回は、テレワークと地方移住という観点から現在の状況を見ていきましょう。
地方移住の現状
コロナ禍で働き方や価値観が変わり、首都圏の中でも東京都から地方に生活拠点を移す動きが生まれています。住民基本台帳人口移動報告によれば、2020年度は41万人超が東京都から近隣県や地方都市に移ったことがわかります。移住先の情報を提供する「ふるさと回帰支援センター」によると、2021年の移住相談件数は4万9,514件で過去最多となりました。テレワークによって地方でも同様に働けると感じたことが、地方移住へ関心を寄せる大きな理由のひとつとなっています。内閣府が行った「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」では、コロナ禍が長引くほど、そして若い世代ほど地方移住への関心が高まっていることがわかります。東京都23区在住の20歳代では約半数が地方移住への関心を示している状況です。地方への移住には様々な要因が考えられますが、コロナ禍がテレワークを普及させる一つの転機となり「在宅勤務が中心で、東京にこだわらなければもっと快適に暮らせる場所がある」という気付きを与えたと言えます。
地方移住する際のポイント
まずメリットとしては、住居費や食費などの家計負担が抑えられることや、家族と過ごすプライベートの時間が長くなることなどが挙げられます。物価の関係上、一般的に首都圏と比較して地方の賃貸や分譲の物件価格は安価に設定されています。また、テレワークが可能であれば毎日会社に出勤する必要がなく、通勤時間を抑えた分、プライベートの時間を長く確保でき、家族との時間を大切にしながら仕事ができることも移住の大きなメリットと言えるでしょう。
一方でデメリットもあります。テレワークにより会社に出勤しなくても自宅で仕事ができることから、仕事と生活の切り替えが難しく、会社に出勤しているとき以上に就業時間が長くなってしまうことが考えられます。また、交通機関が充実している首都圏と異なり地方によっては自家用車を所有しなければ買い物や通院など日常生活に支障が生じる場合があり、今までになかったガソリン代や自動車税などを負担する必要が出てきます。このように移住する環境によっては現在と負担が変わらない、もしくは負担が増加してしまう場合もあるため、事前の情報収集や家計設計などが大切になります。
移住支援金とは
東京都を中心とする首都圏への人口集中の緩和は長年にわたる国の政策課題です。そのような中で、昨今のコロナ禍によるテレワーク導入企業の増加に伴って、今まで移住を推進していなかった市町村でも、移住を支援する制度が設けられるようになってきています。移住支援金は、地方の重要な中小企業への就業や起業をする移住者を支援する補助金です。最大100万円、単身者の場合は最大60万円の範囲内で、各都道府県が設定する金額が給付されます。2021年からは、テレワークで今の仕事を続けつつ地方に移住した方々も対象となりました。
まとめ
冒頭でご紹介した提言書には『「ワークライフバランス」という言葉は、ワーク中心で人生というものを考えるニュアンスがあり、今後は人生のなかに仕事があるという「ワーク・イン・ライフ」という言葉の方が馴染む』とあります。つまり、「働き方改革」から「暮らし方改革」へのシフトです。
この機会に「暮らし方改革」を見つめ直してはいかがでしょうか。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。