バックナンバー

2023年6月号(1)
税制・相続・贈与
CFP®認定者 坂口 猛

2023年度税制改正のポイント~NISA制度・相続税・贈与税~

 2022(令和4)年12月に「令和5年度税制改正大綱」が公表されました。注目ポイントとして、家計金融資産の「貯蓄から投資へ」の流れを促進させるNISA制度の抜本的拡充・恒久化があげられます。他にも、相続税・贈与税の大きな改正がありますので、それぞれの改正ポイントを解説します。

NISA制度の抜本的拡充と恒久化

 現在の「つみたてNISA」と「一般NISA」には、投資可能期間や非課税保有期間などに期限がありますが、政府が掲げる資産所得倍増プランにより家計金融資産を貯蓄から投資にシフトさせるため、NISA制度の拡充や恒久化が図られました。具体的には若年期から高齢期に至るまで、長期・積立・分散投資による継続的な資産形成が行えるように2024年1月よりNISA制度そのものが恒久化され、非課税保有期間の無期限化や年間投資上限額の拡充などが行われます(下表参照)。
 制度の拡充により自分にあった資産形成ができるようになるため、金融リテラシーを向上させ上手に活用していきましょう。

  現行制度 新制度(2024年1月~)
つみたてNISA※1 一般NISA※1 つみたて投資枠※2 成長投資枠※2
年間投資枠 40万円 120万円 120万円 240万円
非課税保有期間 20年間 5年間 無期限化(制限なし)
非課税保有限度額 800万円 600万円 1,800万円
(うち成長投資枠は1,200万円まで)※3
口座開設期間 2023年まで 恒久化(制限なし)
投資対象商品 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託等 長期の積立・分散投資に適した一定の投資信託 上場株式・投資信託等
(一部の商品を除く)
対象年齢 18歳以上 18歳以上

※1.つみたてNISAと一般NISAは選択制
※2.つみたて投資枠と成長投資枠は併用が可能
※3.非課税限度額は、「簿価(=取得価額)」で管理し、枠の再利用が可能

相続時精算課税の見直し

 相続時精算課税制度では、累計2500万円までは贈与税が非課税となり、超えた分に対し一律20%の贈与税が発生します。ただし、この制度で贈与された金額は、相続発生時には相続財産に加算して相続税で精算することになります。また、相続時精算課税制度を選択しているということは、暦年課税の基礎控除額110万円以下の贈与でも贈与税の申告が必要です。
 今回の改正により、相続時精算課税制度に新たに年間110万円の基礎控除が設けられました。これにより年間110万円までの贈与は、贈与税申告不要となります。また、相続が発生したときの相続税の課税価格に加算される財産の価格には、この基礎控除をした金額は含まれないのも重要なポイントです。
 この改正は、2024年1月1日以降に贈与により取得する財産にかかる相続税又は贈与税について適用されます。

暦年課税制度の生前贈与の加算期間延長

 贈与税・相続税は資産移転の時期により税負担が異なることから、生前贈与でも相続発生時でもニーズにあわせた資産移転が行われるよう税制を見直す議論があり、改正がされました。
 これまで暦年課税を利用し、贈与者が亡くなった場合、相続開始前3年以内に行われた贈与は相続税の加算対象となっていましたが、この相続開始前3年以内の期間が7年以内に変更となります。さらに、緩和措置として期間が延びた相続開始前4~7年間は財産の価格合計額から100万円が控除されることが追加されました。
 相続時精算課税の改正と同様、今後の税制メリットに大きな影響を与えることになるため、相続時精算課税制度の利用か暦年課税制度を利用するのかはよく検討しましょう。
 この改正は、2024年1月1日以降の贈与により取得する財産にかかる相続税について適用されます。

まとめ

 2023年の税制改正は、大きな改正として、NISA制度や相続税・贈与税の改正がありましたが、今回紹介した改正以外にも、電気自動車など環境に配慮した車を取得した場合に、車体課税の軽減が適用されるグリーン化特例の期限延長など様々な改正が行われております。毎年の税制改正は私たちの家計に影響を与えることが様々ありますので、他の改正項目も含めて把握しておくようにしましょう。

さらに過去のFPコラムをカテゴリ別で見る

上へ