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「産後パパ育休」を活用して育児と仕事を両立
育児・介護休業法は、出産・育児や介護による労働者の離職を防ぎ、仕事と育児等の両立を目指すことを目的とした法律です。この育児・介護休業法の改正により「産後パパ育休(出生時育児休業)」が、2022年10月新たに創設されました。ワーク・ライフ・バランスの実現に向けた取り組みの一つである本制度について、改正のポイントとともに解説します。
「産後パパ育休(出生時育児休業)」とは?「パパ休暇」との違い
厚生労働省が毎年行っている雇用均等基本調査によると、男性の育児休業取得率は毎年増加傾向にあり、2022年度は17.13%と2021年度の13.97%から3.16ポイント増となったものの、依然として低いレベルに留まっています。
政府は、2025年度までに男性の育児休業取得率を30%に上げることを目標に掲げています。その実現に向けた取り組みの一つとして創設されたのが、「産後パパ育休(出生時育児休業)」です。本制度によって、2022年10月からは1歳まで※の育児休業とは別に、産後8週間以内に4週間(28日)を限度として2回に分けて育児休業を取得することができます。
また、所定の要件を満たして1歳以降も育休を継続する場合、育休開始日が1歳または1歳6カ月時点に限定されていましたが、育休開始日が柔軟化されて継続しやすくなりました。
なお、これまで、1歳まで※の育児休業とは別に妻の産後8週間以内に夫が育児休業を取得した場合、もう1回育児休業を取得できる「パパ休暇」がありましたが、今回の「産後パパ育休(出生時育児休業)」創設に合わせて廃止されました。
※パパママ育休プラス(両親がともに育児休業を取得する場合):育児休業を1歳2カ月まで、保育所に入所できない等特別な事情がある場合は1歳6カ月または2歳に達するまで延長できる制度。
【改正後の働き方・休み方のイメージ】
厚生労働省「育児・介護休業法 改正ポイントのご案内」(P3をご参照ください)
産後パパ育休や育児休業中の収入は?
休業中の賃金は勤務先との取り決めによりますが、休業期間中に賃金が支払われない場合、雇用保険から次の「育児休業給付金」が支給されます。
育児休業開始から180日目※1まで | 休業開始時賃金日額※2支給日数(原則30日間)×67% |
育児休業開始から181日目※1以降 | 休業開始時賃金日額※2支給日数(原則30日間)×50% |
産後パパ育休(出生時育児休業)の給付金が支給された日数は、育児休業給付金の給付率67%の上限日数である180日に通算され、181日目以降は給付率50%となる。
産後パパ育休(出生時育児休業)、または育児休業開始前の直近6カ月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額。
また、産後パパ育休や育児休業期間中は、健康保険料と厚生年金保険料ともに納付免除となり、育児休業給付金は非課税のため所得税・住民税はかかりません。給与所得がなければ雇用保険料の納付も生じないため、休業前の手取り賃金(給与支給明細書にある差引支給額など)と比較した場合、概ね8割程度が支給されることになります。
まとめ
勤労者世帯の約7割が共働き世帯となっている現在において、男性が産後パパ育休を取得して育児や家事に関わることで、これまで女性に偏りがちだった育児や家事の負担を夫婦で分担することができ、女性の継続就業やキャリア形成、出産意欲の促進につながります。
今回の改正により育児休業を分割して取得することができるようになるなど、使い勝手の良くなった「産後パパ育休」や「育児休業制度」を活用することで、男女問わずワーク・ライフ・バランスのとれた働き方が実現するのではないでしょうか。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。