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知っておきたい介護保険
いつ、自分や身近な人に介護が必要となるのかは誰にもわかりません。一方で、2025年には、いわゆる「団塊の世代」が75歳以上となり、認知機能が低下した高齢者の数は、65歳以上で更に増加すると推定されていることから、より一層、医療や介護の需要が増えると考えられます。
2024年度より、介護サービスを利用者に提供する対価として、介護事業者に支払われる介護報酬が1.59%引き上げられました。今回の介護報酬の改定は、介護職員の処遇改善や公的介護保険制度の持続可能性確保などを目的としたもので、これにより、40歳以上の人が納める介護保険料や介護サービス利用者の自己負担額にも影響することが想定されます。介護サービス利用の有無に関わらず、多くの人が関係する介護保険について解説します。
公的介護保険制度とは
公的介護保険制度は、高齢者の介護を社会全体で支えることを目的として、2000年に創設されました。
65歳以上の第1号被保険者と40~64歳までの第2号被保険者を加入対象としており、加入者が要介護(要支援)認定を受けるなど一定の要件のもと、介護サービスが利用できる仕組みとなっています。
利用できる主な介護サービスは、訪問介護や訪問看護といった自宅での生活を支援するサービス、有料老人ホームなどの施設での支援を受けるサービスなどがあり、ケアマネジャーに依頼して、どのサービスを利用するかをプランニングします。
また、要介護度によって1カ月当たり利用できる介護保険サービスは、利用限度額が決められています。限度額の範囲内での利用であれば、自己負担額は利用料の1~3割となりますが、限度額を超えて介護保険サービスを利用したときや介護保険対象外のサービスを利用した場合は、全額自己負担となります。
介護の経済的負担
公益財団法人生命保険文化センターが実施した「2021(令和3)年度生命保険に関する全国実態調査」によると、介護に要した費用(公的介護保険サービスの自己負担費用を含む)のうち、一時的な費用(住宅改造や介護用ベッドの購入など)の合計額は平均74万円、月々にかかる費用の平均は8.3万円となっています。
また、介護を行った期間は年々長くなってきており、平均61.1カ月(5年1カ月)と4年以上介護した人が約5割となっています。
自己負担額の軽減措置
介護時の自己負担額が多くなると不安になるかもしれませんが、負担の軽減措置も用意されています。介護保険のサービス利用料は、利用者の所得に応じて自己負担の上限額が決まっています。自己負担の上限額を超えた部分は、自治体に申請し手続きをすることで介護保険から払い戻されます。さらに、介護費用に加え、医療費の自己負担額も高額になる世帯は、高額介護合算療養費制度を利用することで、年間の自己負担額を軽減できます。
まとめ
前述の介護費用はあくまで目安ですが、社会保障制度を利用したうえで、どの程度の自己負担額が生じるか確認しておくことで、介護にかかる費用の目安がわかります。介護費用を準備するため、iDeCoや新しいNISA制度を活用したり、民間保険会社の介護保険の加入を検討するのも1つの方法です。民間の介護保険に加入する場合は、保険会社ごとに基準が異なるため、保険金の支払事由を事前にしっかりと確認することが大切です。
最後に、お住まいの地域によって利用できる介護サービスの内容は異なります。将来、自身や家族に介護が必要となった際に迅速に対応できるよう、地域包括支援センターなどを活用し、事前に情報収集をしておきましょう。
- ※バックナンバーは、原則執筆当時の法令・税制等に基づいて書かれたものをそのまま掲載していますが、一部最新データ等に加筆修正しているものもあります。
- ※コラムニストは、その当時のFP広報センタースタッフであり、コラムは執筆者個人の見解で執筆したものです。