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2024年10月号(2)
ライフプラン
CFP®認定者 中田 真

知っておきたい奨学金制度

 教育資金は、近年増加の一途をたどり、大学等に進学する際に奨学金制度の利用を考えている人も少なくありません。独立行政法人日本学生支援機構の奨学金事業は、「教育の機会均等」を理念として、意欲と能力があるにも関わらず、経済的な理由で修学が困難な学生を支援するため、学資の貸与や給付を行っています。今回は、奨学金の中でも利用者が多い日本学生支援機構の奨学金の概要や利用時の注意点について解説します。

奨学金の概要

 奨学金は国内の大学等への進学だけでなく、海外の大学等への進学や留学、生計維持者の死亡や事故、予期できない事由などにより家計が急変した場合にも利用できます。
 奨学金の種類は、大きく分けて、卒業後に返済が必要となる「貸与型」と返済不要の「給付型」があります。さらに、貸与型には、無利子で借りる「第一種奨学金」と有利子で借りる「第二種奨学金」及び「第一種・第二種併用貸与の奨学金」があります。
 また、第二種奨学金の利率算定方法は、貸与終了時の利率が返還完了まで適用される「利率固定方式」と、おおむね5年ごとに利率が見直される「利率見直し方式」があり、申込時にいずれかを選択します。利率は貸与終了時から適用となるため、金利情勢などを見通して選択する必要がありますが、利率算定方法は、貸与期間が終了する年度の一定期間まで変更可能です。
 なお、それぞれの奨学金には、申込資格や学力基準、家計基準等の各種条件が定められています。詳細は、独立行政法人日本学生支援機構のホームページをご確認ください。

奨学金利用時の注意点

 奨学金を利用する際の主な注意点は以下のとおりです。
(1)進学前に必要な費用には充当できない
 日本学生支援機構の奨学金は、進学後に初めて入金されますので、進学前に必要な受験料や入学金、授業料などの費用には、奨学金を充当することはできません。そのため、奨学金を利用する場合でも、進学前に必要な費用については、あらかじめ貯蓄等で準備をしておく必要があります。
 万一、貯蓄等で目標額には届かない場合は、国や民間金融機関の教育ローンを利用するなどの方法もありますが、審査等に時間がかかるケースも多く、融資条件等も各金融機関で異なります。よく比較をしたうえで利用を検討するようにしましょう。

(2)奨学金返還方式の選択に注意
 卒業後に返還する必要がある貸与型奨学金の返還方法は、第一種奨学金と第二種奨学金でそれぞれ異なります。第一種奨学金は、貸与総額に応じて返還月額が算出され、返還完了まで定額で返還する「定額返還方式」と、前年の課税対象所得に応じてその年の返還月額が決まる「所得連動返還方式」のいずれかを選択できます。一方、第二種奨学金は、「定額返還方式」のみとなります。
 所得連動返還方式を選択した場合、課税対象所得が少ない期間は、定額返還方式より返還月額が少なくなりますが、所得が増えれば、返還月額が多くなります。奨学金の返還が困難な場合に利用できる各種救済制度もありますが、所得連動返還方式については、月々の返還額を減額できる「減額返還制度」を利用することはできません。奨学金の返還は、将来のライフプランに影響するため、それぞれのメリットやデメリットを理解したうえで選択するようにしましょう。

まとめ

 今回は、日本学生支援機構の奨学金について解説しました。奨学金の利用を検討する際は、奨学金制度の基本的な内容を理解するだけでなく、返還時に将来のライフプランも見据える必要があります。日本学生支援機構の奨学金以外にも、大学や地方自治体等の独自の支援制度もありますので、情報収集も含めて早めに準備を始めておくことをお勧めします。

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